【民法改正】不動産賃貸借で抑えておくべき3つのポイントと対応策

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【民法改正】不動産賃貸借で抑えておくべき3つのポイントと対応策

2021年2月7日

こんにちは。ひろポンプです。

2020年4月、120年ぶりに民法改正が行われました。

  • 民法改正で不動産の賃貸借に対してどのような影響があるのか
  • 不動産賃貸管理会社としてどのような対応をすれば良いのか

上記の疑問に対して【民法改正】不動産賃貸借で抑えておくべき3つのポイントと対応策というテーマで解説していきます。

この記事の筆者

賃貸借をメインで扱う不動産会社で約5年の実務経験、宅地建物取引士・FP2級の資格を所有しています。

さっそく3つのポイントを見ていきましょう。

民法改正により不動産賃貸借で抑えておくべき3つのポイント

民法改正により不動産賃貸借で抑えておくべき3つのポイント

賃借人の修繕権

まずは賃借人の修繕権です。

民法改正により、賃借人の修繕権が明文化されました。

下記の民法の抜粋を見ていきましょう。

民法 607条の2(賃借人による修繕)
賃借物の修繕である場合において、次に掲げるときは、賃借人はその修繕をすることができる。

① 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったかにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
② 急迫な事情があるとき

つまり、①か②いずれかの要件を満たすと賃借人は自分で修繕できることになります。

これにより予想されることは、何か不具合があった場合に、既存の設備よりも高いグレード仕様の設備に交換修繕を賃借人が行い、その費用を貸主に請求するといった事態が考えられます。

連帯保証人への情報提供義務

続いて、連帯保証人への情報提供義務です。

事業用賃貸物件の場合、賃借人から個人の連帯保証人への情報提供義務が明文化されました。

事業用の賃貸借契約締結時に賃借人は、連帯保証人(法人は除く)に対し、以下の情報を提供する義務があります。

まずこちらも下記の民法の抜粋を見ていきましょう。

① 財産及び収支の状況
② 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
③ 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

賃借人が上記に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために個人の連帯保証人がその事項について誤認した場合、賃貸人がそれを知っている又は知ることができたときは、個人の連帯保証人は、保証契約を取り消すことができてしまいます。

連帯保証人の元本確定事由

最後に、連帯保証人の元本確定事由についてです。

個人の連帯保証人が亡くなったとき、それ以降の賃借人の債務不履行が保証されない可能性があります。

下記の民法の抜粋を見ていきます。

民法 456条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)

① 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき
② 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
③ 主たる債務者又は保証人が死亡したとき

上記により、賃借人又は連帯保証人が死亡によって、元本が確定するので、死亡後の原因による原状回復費用や死亡後明渡しまでの家賃は請求できなくなりました。

それぞれのトラブルを防ぐためのオススメ対応策

それぞれのトラブルを防ぐためのオススメ対応策

ここからは、それぞれのトラブルを防ぐためのオススメ対応策を紹介します。大きく分けて2つあります。

契約書の特約事項に追加で明記

上記の3つのポイント、それぞれで『契約書の特約事項に追加で明記する』『証拠として書面に残す』という対応策がオススメです。

逆にこの対応でしか不動産賃貸借管理会社の身を守る方法がないとも言えてしまいます。必ずチェックして理解を深めて実務で使えるようにしていきましょう。

賃借人の修繕

あらかじめ、契約書で賃借人が可能な修繕範囲を明記しておくことが必要です。

<特約の文例>
・賃借人は増改築や耐震工事など建物の躯体に影響する大希望修繕する権利はもたない
・修繕権は小規模修繕に限り、緊急を要するとき以外は修繕箇所を通知し、修繕箇所・方法等を賃貸人と協議する

連帯保証人への情報提供義務

賃借人から連帯保証人へ情報を開示した証拠を書面に残すことがオススメの対応策です。

下記の文例を参考に書面に記載しておきましょう。


<特約の文例>
賃借人は連帯保証人に対し、〇〇年〇月〇日仲介業者〇〇不動産の事務所において、以下の書類を連帯保証人に示した上で、以下の事項を説明したことを賃借人・連帯保証人を確認する。
1 賃借人の連帯保証人への説明内容は以下の通り
① 賃借人は〇〇〇〇に個人連帯保証人を委託するほか、本件賃貸借の保証人として金〇〇〇万円を賃貸人に預託するものとする。
② 〇〇年〇月〇日期末の決算書の借入明細書に記載のとおり、賃借人会社は合計〇〇万円の借り入れを銀行からしているが、約定通り返済しており遅滞は無い。
③ 〇〇年〇月〇日時点での買掛金等賃借人の支払いの遅滞は存在しない。2 賃借人が連帯保証人へ示した財務関係の書類
① 〇〇年〇月〇日期末の決算書・同付属明細書・税務申告書
② 〇〇年〇月〇日付(直近)の財務一覧表

上記のように、賃借人が連帯保証人(親族等)へ「事業収支や債務の額等の情報を説明したくない」という場合には、保証会社の利用していただく方が無難といえます。

※賃借人が法人・連帯保証人がその法人の代表取締役の場合は、情報提供が不要という解釈が一般的です。

連帯保証人の元本確定事由

保証会社を利用する場合には、元本確定事由が適用されないため、保証会社の利用を強く勧めることが良いと思います。

もし保証会社が利用できない場合は、定期的に連帯保証人や賃借人に定期的に確認させ、報告義務を負わせるようにしましょう。

具体的には、契約更新時に賃借人へ『連帯保証人がご健在か確認する』フローを取り入れるなど、仕組作りが必要と考えます。

都庁の不動産相談窓口への確認

実際の不動産取引が上記の特約の文例に当てはまらないことがほとんどだと思います。。。

そういった場合は、迷わず都庁の不動産相談窓口へ確認するようにしましょう。

>>不動産相談 | 東京都住宅政策本部

プロである都庁の不動産相談窓口へ確認することが一番無難であると考えます。

私も不動産賃貸借の実務を経験していて、何度も都庁へ確認をしております。都庁の方も相談に慣れているので、やさしく丁寧に教えてくれます。

「この記事を読めば全部対応できると思ったのに、、、」と感じる方もいるかと思いますが、不動産賃貸借は民法だけではなく、他にも様々な法律と関係しているので、都庁へ確認した方がより早くそして後々トラブルになりにくいです。

『迷ったら都庁へ相談』ぐらいに意識の方がむしろで良いと思いますよ。ぜひ都庁の不動産相談窓口へ確認するようにしましょう。

以上です。

民法改正と聞いてどのような影響があるのか気になった方が多いかと思いますが、基本的な考え方を確認すれば、そこまで難しいことではないと個人的には思います。

ただまだ民法改正からわずかしか経っていません。今後もっと大きなトラブルが起きる可能性もあります。不動産賃貸管理会社として日常からアンテナを立てて問題を解決していくことが大切です。

それではまたお会いしましょう(^O^)

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